江戸時代は現在にも劣らないほどの園芸ブームがありました。
江戸初期は、大名が茶道や和歌と併せるように今日に名の残る著名な作庭家に花鳥風月をあしらった築庭を造らせるのが主でしたが、江戸時代の爛熟期に入ると個々の草木の美しさに関心が集まり、植木を栽培して販売する植木屋が現れるようになります。
桜の染井吉野という品種が江戸の染井村の植木屋で桜の品種改良によって誕生した話は、お聞きになったことがあるかと思います。
実は桜だけでなく、椿、梅、アサガオなど、今日、私たちが見ることができる草木の多くは江戸時代の植木屋が苦心して造り上げたものなのです。
文化、文政期は、江戸時代の文化が多種多様な広がり、発展をみせた時代でありました。
この時代にあって、植木屋増田金太は、花や葉に白や色の変わった斑入りの入る草木、花や葉が八重や奇妙に変化して際立った特徴のあるものを栽培し、これらを草木の「奇品」とし、同好の氏を募り、互いに品評するようになりました。
そのような中から生まれたのが、本書「草木奇品家雅見(そうもくきひんかがみ)」です。
増田金太は、持ち前の探究心と行動力によって江戸各地の武家、寺院、諸家が所有するこれら「奇品」を実地につぶさに観察し、どこの誰が、どのような「奇品」を所有しているのか、また、その特徴を克明に記録して行きました。
この手法は、「博物学」を提唱された故上野益三先生によって「博物学にも多大の貢献をすることになったのである。」(「博物学の時代」上野益三著1990年八坂書房187ページ)と評されております。
増田繁亭金太郎 肖像画 「博物学の時代」上野益三著1990年八坂書房から
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